ヘ雲一つなく、太陽がギラ/\照りつけるので、まぶしくて顔をそむけていました。
 そのときでした。突然、あたりが暗くなったのです。しかも、これは太陽が雲にさえぎられたときの暗さとは違っていました。振り返って見ると、これはまたどうしたことでしょう。今、私と太陽との間に、何か途方もなく大きなものが、ずん/\島の方へ向って進んで来るのです。高さは二マイルばかりありそうでした。そして、六七分間というものは、すっかり、太陽を隠してしまいました。
 やがて、その物は私の真上に来ましたが、見ると、どうもそれは固い塊りのようで、底の方が平たくなっているのです。ちょうどそのとき、私は二百ヤードばかりの高い丘の上に立っていたのですが、やがて、その大きな物はずん/\下にさがって来ました。そして、私から一マイルとは離れていない眼の前に見えて来たのです。私はさっそく、望遠鏡を取り出して眺めました。その物体の斜面には、たくさんの人間が上下に動きまわっているのです。その姿がはっきりと見えるのです。たゞ、何をしているのかは、わかりませんでした。
 私は、今、空に浮んでいるその島が、どちら側へ動きだすかと、じっと眺めてい
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