鰍ンました。
「もう大丈夫だ。箱は本船にくゝりつけたし、今すぐ大工が屋根に穴をあけて出してやるから。」
 と外では言っています。
「そんなことしなくてもいゝのですよ。それより早く誰かチョイとこの箱を指でつまみあげて、船長室へ持って行ってください。」
 私がこう答えると、船員たちは私を気狂だと思ったらしく、大笑いしていました。大工がやって来て、箱に穴をあけ、そこから私は救い出され、本船に移されました。
 船員たちはみな驚いて、いろんなことを尋ねますが、私はもう答える気もしないのでした。こんな大勢の小人を見て、私の方も驚いてしまったのです。なにしろ長い間、あの大きな人間ばかり見つけてきたので、船長たちが小人のように思えるのです。私が今にも気絶しそうな顔をしているので、船長は気つけ薬を飲ませてくれました。それから船長室に私をつれて行き、「まあ一寝入りしなさるんですね。」と言ってくれました。
 私は数時間眠って、すっかり元気を取り戻しました。起きたのは夜の八時頃でした。船長は、私が長い間食事をしていないだろうと思って、すぐ晩食を言いつけてくれました。私がもう気狂じみた目つきをしたり、変なことを
前へ 次へ
全249ページ中141ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング