黷ェ小さい針で一つ/\それをほじくり出してくれたので、やっとらくになりました。だが、ひどく身体が弱ってしまい、あの動物に抱きしめられていたため、両脇が痛くてたまりません。私はそのため二週間ばかり病床につきました。王、王妃、そのほか、宮廷の人たちが、毎日見舞いに来てくれました。猿は殺され、そして今後こんな動物を宮廷で飼ってはならないことになりました。
 病気が治ると、私は王にお礼を申し上げに行きました。王はうれしそうに、今度のことをさんざ、おからかいになるのでした。猿に抱かれていた間どんな気持がしたか、あんな食物の味はどうだったか、どんなふうにして食べさすのか、などお尋ねになります。そして、あんな場合、ヨーロッパではどうするのか、と言われます。そこで、私は、
「ヨーロッパには猿などいません。いてもそれは物好きが遠方からつかまえて来たもので、そんなものは実に可愛らしい奴です。そんなのなら十二匹ぐらい束になってやって来ても、私は負けません。なに、この間のあの大きな奴だって、あれが私の部屋に片手を差し込んだとき、あのときも私は平気だったのです。私がほんとに怖いと思ったら、この短剣で叩きつけます
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