ヘちゃんと銀の箱に入れて、乳母さんがポケットにしまっていて、食事のときになって、欲しいというと、必ず自分で綺麗に拭いて、それから、私に渡してくれます。王妃と一しょに食事をするのは二人の王女だけで、姉の方は十六歳、妹は十三歳と一ヵ月でした。
 王妃が肉を切って、私の皿に入れてくださると、私は自分でさらに、それを小さく切って食べます。この、まゝごとのような、私の食べ方が、王妃にはとても面白かったのでしょう。というのは、王妃は、(少食の方でしたが)なにしろ、イギリスの百姓が十二人も食べられるほどのものを、一口に召し上るのです。実際この有様には、私もとき/″\、やりきれない気持がしました。
 王妃は、雲雀の翼を、骨ごとポリ/\噛み砕いてしまわれますが、その翼の大きさは、七面鳥の翼の九倍からあるのです。それに、パンの一口分も、驚くほど大きなものです。
 王妃は黄金の盃で、大樽一箇分以上の飲物を、一息にお飲みになります。それから、王妃のナイフの大きさは、大鎌の二倍もあります。スプーンもフォークも、それ/″\みな実に大きなものです。私はいつかグラムダルクリッチが、面白半分に宮廷の食卓につれて行ってく
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