゙のないほど、小さな鍵を作ってくれました。イギリスにだって、紳士の家の門などには、もっと大きなのがあるはずです。私はこの鍵は自分のポケットにしまっておくことにしました。あんまり小さいので、グラムダルクリッチに持たせては、失くするかもしれないと思ったからです。
 王妃は一番薄い絹地で、私の洋服を作らせてくださいました。が、これはイギリスの毛布ぐらいの厚さで、馴れるまでにはずいぶん着心地の悪い服でした。仕立はすっかりこの国の型でしたが、ペルシャ服のようなところもあれば、支那服にも似ていて、非常にきちんとしていて重々しいものでした。
 王妃は私がすっかりお気に入りで、私がいないと食事も召し上らないほどになりました。私は王妃の食卓の上に、ちょうどその左肱《ひだりひじ》のあたりに、私のテーブルと椅子を置いてもらうのでした。グラムダルクリッチは、私のテーブルの近くの、床の上の腰掛の上に立って、私の面倒をみてくれるのです。
 私のためには、銀の皿が一揃い、そのほかいろんな品がありましたが、これも大きさは、王妃御自身のものにくらべると、ちょうど玩具屋にある人形のお家の食器類のようなものでした。私の食器
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