アれは侏儒《こびと》でもない、侏儒なら、王妃のお気に入りのこの国第一の小人でも、身の丈三十フィートはあるが、これはもっと小さいから、侏儒とも言えない、と不思議がるのでした。そんなふうにして、いろ/\議論をしたあげく、三人はとう/\、こう決めてしまいました。これはつまり、自然がいたずらして作り出したものだろう、ということになって、私のことを、『自然の戯れ』だと彼等は言うのでした。
 こんなふうに学者たちが私を、『自然の戯れ』だと決めてしまったので、私はそれが、ひどく不服でした。そこで、私は国王陛下に申し上げました。
「どうか私の申し上げることも少し聞いてください。私はこう見えても、これでも故国に帰りさえすれば、私と同じような背丈の人間が、何百万人といるのです。そしてそこでは、動物も樹木も家も、みんな私の身体と同じ割合で、小さくなっています。ですから、私でも、その国でなら、充分自分で身を守ることもできるし、ちゃんと立派に生きてゆけるのです。」
 私はこう言って、学者たちの見当違いを正してやったつもりなのです。しかし、彼等はたゞニヤ/\笑うばかりで、
「あんなうまいこと言うが、農夫から教え込
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