ワれたのだろう。」
と言うのでした。
しかし、陛下はさすがに賢いお方でした。それで、学者たちを帰らすと、もう一度、私の旧主人の農夫を呼びにやられました。私の旧主人がやって来ると、陛下はまず御自身で、彼にいろ/\とお尋ねになりました。それから、その旧主人と私と娘と、三人に目の前で話させて御覧になりました。そして、これは私たちの言ってることが、ほんとかもしれない、というふうにお考えになりました。
陛下は王妃に、私の面倒をよくみるように言いつけられました。また、私とグラムダルクリッチが非常に仲好しなのを御覧になって、私の世話はこの娘にやらせようと、お考えになりました。そこで彼女は宮中に便利な部屋を一つあてがわれました。そして、彼女の世話をするために、家庭教師の婦人が一人、それから、着物の世話をする女中が一人、いろんな雑用をする召使が二人、それだけが彼女に附き添うことになりました。けれども、私の世話は全部、グラムダルクリッチ一人がしてくれるのでした。
王妃は、お附きの指物師《さしものし》に言いつけて、私の寝室になるような、一つの箱を作らせになりました。これを作るには、私とグラムダルクリ
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