うぐいす
原民喜

 梅の花が咲きはじめました。学校の門のところにある梅も、公園の池のほとりにある梅も、静かに花をひらきました。雄二の家の庭の白梅も咲きました。花に陽があたると、白い花はパッとうれしそうにかがやきます。日蔭の枝にある花は静かに青空をながめています。梅の花はみんなじっと何かを待っているようでした。
 雄二の家の庭さきに、ある朝、うぐいすがやって来ました。ホーホケキョ ホーホケキョ うぐいすは梅の枝にとまって二声三声さえずりました。が、すぐにへいをとびこえて、どこかへとんで行ってしまいました。
 その翌朝もまたうぐいすがやって来ました。こんどは、雄二の家の庭が気に入ったのか、少しゆっくりしているようでした。うぐいすは梅の木の枝から枝へ上手にとびうつって遊んでいました。が、しばらくすると、またへいをとびこして行ってしまいました。
 うぐいすは毎朝やって来て、だんだん雄二の家の庭を好きになるようでした。縁側の方から雄二たちが見ていても、あわてて逃げだすようなことはありません。
 日曜日の朝でした。
『よし、あのうぐいすを一つ写真にうつしてやろう』と、雄二の父は早速カメラを持って
次へ
全3ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング