縁側に現れました。
『とれた、とれた、うまくとれたぞ』
父はうれしそうでした。雄二もどんな写真が出来るのか早く見たくてたまりませんでした。五日ほどして、うぐいすの写真は出来上りました。それは庭の黒べいと梅の枝が黒くうつっていて、白い花とうぐいすの姿がくっきりと浮出ている、すばらしい写真でした。雄二は父からその写真を一枚もらいました。
けれども、その写真が出来た頃から、うぐいすは雄二の家の庭に姿を見せなくなりました。どうしたのかしら、どうしたのかしら、と、雄二はしきりにさびしくなりました。
雄二はうぐいすの写真をポケットに入れて学校へ行きました。
『僕のうちに来ていたうぐいすだよ』
『そうかい』と、山田君は目をみはりました。
雄二は山田君をつれて、家にもどって来ました。が、庭に来てみても、やはりうぐいすはいませんでした。雄二と山田君はその写真と庭の梅の木を見くらべて調べてみました。ちょうど、あのうぐいすがとまっていた枝が見つかりました。
『あそこのところにとまっていたのだね』
『うん、あそこのところだ』
『あそこのところに何かしるしつけておこう』
山田君はポケットから白いひもを
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