「狂気について」など
原民喜
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「うそ」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)がら/\
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「狂気について」は昨年三田文学九月号の Essay on Man のために書いて頂いたものだが、それが標題とされ今度一冊の書物となり読み返すことの出来たのは、僕にとつてほんとに嬉しいことだつた。もつと嬉しいのは、この書があの再び聞えてくるかもしれない世紀の暗い不吉な足音に対し、知識人の深い憂悩と祈願を含んでゐることだ。僕は自分のうちに存在する狂気に気づき、それをどう扱ふべきか常に悩んでゐるものだが、(「狂気」なしでは偉大な事業はなしとげられないと申す人も居られます。それはうそ[#「うそ」に傍点]であります。「狂気」によつてなされた事業は、必ず荒廃と犠牲を伴ひます。ヒユーマニストは「狂気」を避けねばなりません。冷静が、その行動の準則とならねばならぬわけです)と語る著者の言葉はしつくりと僕の頭脳に沁みてくる。
僕たちはつい昨日まで戦争といふ「
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