狂気」の壁に取まかれてゐたが、その壁ははたしてほんとに取除かれたのだらうか。(人間が自分の「思ひこみ」を反省できないばかりか、自分の主義主張の機械になり、いつの間にかがら/\まはり出す)危機が向側からやつて来ないと断言できるだらうか。だが、さうなれば、(これまでの戦争とは異つた性格を持つた戦争、二つの制度と二つの世界観とに支配された集団の死闘といふ形の新しい戦争、そしてその帰結は、恐らく勝利者も敗北者もないことになり、一種の「世なほし」が行われることになる戦争、しかも新兵器の用ひられる戦争)となるだらうが、こんな「狂気」を僕たちは僕たちの意欲によつて避けることは出来ないのだらうか。(戦争で実害を蒙るのは、大多数の人民である。人民の味方[#「人民の味方」に傍点]である筈のコミユニスムは、戦争を阻止する為のあらゆる手段をとらねばならぬ)とこの著者は語る一方、(宗教のヒユーマナイゼーシヨンとは「鴉片」的なものを一切自ら棄てて、神すら人間の為にある[#「神すら人間の為にある」に傍点]ことを認知し、自らの作つたものの機械となり奴隷となりやすい人間の弱小さに対する反省を教へ)人類の自滅を防ぐことで
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