落合町山川記
林芙美子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)和田堀《わだぼり》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一、二|町《ちょう》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
−−
[#ここから2字下げ]
遠き古里の山川を
思ひ出す心地するなり
[#ここで字下げ終わり]
私は、和田堀《わだぼり》の妙法寺の森の中の家から、堰《せき》のある落合川《おちあいがわ》のそばの三輪の家に引越しをして来た時、はたき[#「はたき」に傍点]をつかいながら、此様なうたを思わずくちずさんだものであった。この堰の見える落合の窪地に越して来たのは、尾崎翠《おざきみどり》さんという非常にいい小説を書く女友達が、「ずっと前、私の居た家が空《あ》いているから来ませんか」と此様に誘ってくれた事に原因していた。前の、妙法寺のように荒れ果てた感じではなく、木口《きぐち》のいい家で、近所が大変にぎやかであった。二階の障子《しょうじ》を開けると、川添いに合歓《ねむ》の花が咲いていて川の水が遠くまで見えた。
東中野の駅までは私
次へ
全22ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング