ゝしりを男の筆の上に見た。
 私は、肺病で狂人じみている、その不幸な男の為に、あのランタンの下で、「貴方一人に身も世も捨てた……」と、唄わなくちゃあならないのだ。
 夕暮れの涼しい風をうけて、若松町の通りを歩いていると、新宿のカフェーにかえる気もしなかった。
 ヘエ! 使い果して二分残るか、ふっとこんな言葉が思い出された。

「貴方! 私と一緒に温泉に行かない。」
 私があんまり酔っぱらったので、その夜時ちゃんは淋しい瞳をして私を見ていた。

 七月×日
 あゝ人生いたるところに青山ありだよ、男から佗びの手紙来る。

 夜。
 時ちゃんのお母さん来る。五円借す。
 チュウインガムを噛むより味気ない世の中、何もかもが吸殻のようになってしまった。
 貯金でもして、久し振りにお母さんの顔でもみてこようかしら。
 私はコック場へ行くついでにウイスキ[#「スキ」に傍点]ーを盗んで呑んだ。

 七月×日
 魚屋のように淋しい寝ざめ。四人の女は、ドロドロに崩れた白い液体のように、一切を休めて眠っている。私は枕元の煙草をくゆらしながら、投げ出された時ちゃんの腕を見ていた。
 まだ十七で肌が桃色していた
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