ランマンと花の咲き乱れた四月の空は赤旗だ、地球の外には、颯々として熱風が吹きこぼれて、オーイオーイ見えないよび声が四月の空に弾けている。
 飛び出してお出でよッ!
 誰も知らないところで働きましょう。茫々として霞の中に私は太い手を見た。真黒い腕を見た。

 四月×日
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一度はきやすめ二度は嘘
三度のよもやにしかされて……
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 憎らしい私の煩悩よ、私は女でございました。やっぱり切ない涙にくれまする。
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鶏の生胆に
花火が散って夜が来た
東西! 東西!
そろそろ男との大詰が近づいたよ
一刀両断に切りつけた男の腸に
メダカがぴんぴん泳いでいた

臭い臭い夜だよ
誰も居なけりや泥棒にはいりますぞ!
私は貧乏故男も逃げて行きました
あゝ真暗い頬かぶりの夜だよ。
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 土を凝視めて歩いていると、しみじみ悲しくて、病犬のようにふるえて来る。なにくそ! こんな事じゃあいけないね。
 美しい街の舗道を今日も私は、――女を買ってくれないか、女を売ろう……と野良犬のように彷徨した。

 引き止めても引き止まら
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