えるまで帰えっちや駄目だわ……私達が叱られるもの、それにどんなもん持って行かれるか判らないし。」
何と云う救いがたなき女達だろう、何がおかしいのか、皆目尻に冷嘲を含んで私が消えたら、一どきに哄笑しそうな様子だった。
いつの間に誰か来たのか、玄関の横の庭には、赤い男の靴が一足ぬいであった。
「見て御らんなさいな、本が一冊と雑記帳ですよ、何も取りゃしませんよ。」
「帰えっちゃ、やかましいよ。」女中風な女が、一番不快だった。
腹が大きくなると、こんなにもひねくれ[#「ひねくれ」に傍点]て動物的になるものか、彼女等の瞳はまるで猿だ。
「困るのは勝手ですよ。」外の暮色に押されて花屋の菜の花の前に来ると、始めて私は大きい息をついた。
あゝ菜の花の古里。
あの女達も、此菜の花の郷愁を知らないのかしら……だが、何年か、見きわめもつかない生活を東京で続けたら、私自身の姿があんな風になるかも知れない。
街の菜の花!
清純な気持ちで、生きたいものだ。何とかどうにか、目標を定めたいものだ。今見て来た女達の、実もフタもないザラザラした人情を感じると、私を捨てゝ去った島の男が呪ろわしくさえ思えて、
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