腫れぼったい瞳を風に吹かせて、久し振りに晴々と故郷のような路を歩いた。

 芙美子はケイベツすべき女で厶います!

 荒みきった私は、つッと櫟林を抜けると、松さんが、いじらしくなった。疲れて子供のように自動車に寝ている男の事を思うと、走ってかえって起してやろうかしら……でも恥ずかしがるかも知れないな、私は松さんが落ちついて、運転台で煙草を吸っていた事を思うと、やっぱり厭な男に思えた。
 誰か、私を愛《いと》しがって呉《くれ》る人はないか、七月の空に流離の雲が流れている、私の姿だ。野花を摘み摘みプロヴァンスの唄を唄った。

 八月×日
 女給達に手紙を書いてやる。秋田から来たばかりの、おみき[#「おみき」に傍点]さんが鉛筆を甞めながら眠りこけている。
 酒場ではお上さんが、一本のキング、オヴ、キングを清水で七本に利殖している。埃と、むし暑さ、氷を沢山呑むと、髪の毛が沢山抜けると云って氷を呑まない由ちゃんも、冷蔵庫から氷の塊を盗んで来ては、パリパリ噛んでいる。
「一寸! ラブレターって、どんな書き出しがいゝの……。」
 八重ちゃんが真黒な瞳をクルクルさせて、赤い唇を鳴らす。
 秋田とサガレ
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