だが……
オーイ オーイ
寒冷な風の吹く荒神山の上で呼んでいる
波のように元気な喚叫に耳をそばだてよ!
可哀想な女房や子供達が
あんなに脊のびして
空高く呼んでいるではないか!
遠い潮鳴りの音を聞いたか!
波の怒号するを聞いたか
山の上の枯木の下に
枯木と一緒に双手を振っている女房子供の目の底には
火の粉のようにつっ走って行く
赤い帆がいつまでも写っていたよ。
[#ここで字下げ終わり]
宿へ帰えったら、蒼ざめた男の顔が、ぼんやり天井を見ていた。
「宿の叔母さんが迎いに来て、ビックリしちゃった。」
「………………」
私は子供のように涙が湧いた。何の涙でもない、白々とした考えのない涙が、あとからあとから、あふれて、沈黙ってしきい[#「しきい」に傍点]の所に立って泣いた。夕方の空を時鳥がケンケン鳴いて行く。
「こゝへ来るまでは、すがれ[#「すがれ」に傍点]たらすがって[#「すがって」に傍点]みようと思って来たけど、宿の叔母さんの話では、奥さんも子供もあるって聞きましたよ、それに、町のストライキを見たら、どうしても、貴方に会って、はっきりとすがら[#「すがら」に傍点]なくてはいけな
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