の方へおいでんさった方が……。」
 私は心細くかまぼこ[#「かまぼこ」に傍点]を噛んだ。
 社員達は、全部書類を持って、倶楽部へ集っていると云う。
 私はぼんやりと外へ出た。万里の城のように、えんえんとコンクリートの壁をめぐらしたドックを山の上から見ると、菜っぱ服を旗に押したてゝ通用門みたいなとこに、黒蟻のような職工の群が、ワンワン唸っている。
 山の小道を、子供を連れたお上さんやお婆さんが、点々と上って来る。六月の海は、銀の粉を吹いて、縺れた樹の色が、シンセンな匂いをクンクンさせていた。
「尾道から警官がいっぱい来たんじゃと。」
 髪をいっせいに、後に吹かせた若いお上さんが、ドックを見降した。××と職工のこぜりあい[#「こぜりあい」に傍点]。
「しっかりやれッ!」
「負けなはんな!」
「オーイ……」真昼間の、裸の職工達のリンリとした肌を見ていると、私も両手をあげて叫んだ。旅の古里の言葉で、
「しっかりやってつかアしゃア[#「しっかりやってつかアしゃア」に傍点]。」
「あんた娼妓さんかな。」私は沈黙ってコックリした。
「御亭主《ゴテイ》があそこにおってんな、うちの人ア、こうなったら、も
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