ばかりの金を借して、もう馴々しく、人に葱を刻ませようとしている。
 あんな人間に図々しくされると一番たまらない。
 遠くで餅をつく勇ましい音が聞える。
 私は沈黙ってボリボリ大根の塩漬を噛んでいたが、台所の方も佗しそうに、コツコツ葱を刻み出した。
「あゝ刻んであげましょう。」
 沈黙っているにはしのびない悲しさで、障子を開けて、松田さんの鉋丁を取った。
「昨夜はありがとう、五円叔母さんに払って、五円残ってますから、五円お返ししときますわ。」
 松田さんは沈黙って竹の皮から滴るように紅い肉片を取って鍋に入れていた。ふと見上げた歪んだ松田さんの顔に、小さい涙が一滴光っていた。
 奥では弄花が始ったのか、叔母さんの、いつものヒステリー声がビンビン天井をつき抜けて行く。
 松田さんは沈黙ったまま米を磨ぎ出した。
「アラ、御飯まだ焚かなかったんですか。」
「えゝ貴女が御飯を食べていらっしたから、肉を早く上げようと思って。」

 洋食皿に割けてもらった肉が、どんな思いで私の食道を通ったか。
 私は色んな人の姿を思い浮べた。
 そしてみんなくだらなく思えた。
 松田さんと結婚してもいゝと思えた、始め
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