の……。」お千代さんは蒼白い顔をかしげて、佗しそうに赤い絵具をベタベタ蝶々に塗っている。
 こゝは、女工が二十人、男工が十五人の小さなセルロイド工場、鉛のように生気のない女工さんの手から、キュウピーがおどけて出たり、夜店物のお垂げ止めや、前帯芯や、様々な下層階級相手の粗製品が、毎日毎日私達の手から洪水の如く流れて行く。
 朝の七時から、夕方の五時まで、私達の周囲は、ゆでイカ[#「ゆでイカ」に傍点]のような色をしたセルロイドの蝶々や、キュウピーでいっぱいだ。
 文字通り護謨臭い、それ等の製品に埋れて仕事が済むまで、めったに首をあげて、窓も見られない状態だ。
 事務所の会計の妻君が、私達の疲れたところを見計らっては、皮肉に油をさしに来る。
「急いでくれなくちゃ困るよ。」
 フンお前も私達と同じ女工上りじゃないか、「俺達ゃ機械じゃねえんだよっ。」発送部の男達が、その女が来ると、舌を出して笑いあった。
 五時になると、二十分は私達の労力のおまけだ、日給袋のはいった笊が廻って来ると、私達はしばらくは、激しい争奪戦を開始して、自分の日給袋を見つけ出す。

 襷を掛けたまゝ工場の門を出ると、お千代さ
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