ージ]

   三白草《どくだみ》の花

 九月×日
 今日も亦あの雲だ。
 むくむくと湧き上る雲の流れを私は昼の蚊帳の中から眺めていた。

 今日こそ十二社に歩いて行こう――そうしてお父さんやお母さんの様子を見てこなくちゃあ……私はお隣りの信玄袋に凭れている大学生に声を掛けた。
「新宿まで行くんですが、大丈夫でしょうかね。」
「まだ電車も自動車もありませんよ。」
「勿論歩いて行くんですよ。」
 此青年は沈黙って無気味な雲を見ていた。
「貴方はいつまで野宿をなさるおつもりですか?」
「さあ、此広場の人達がタイキャク[#「タイキャク」に傍点]するまで、僕は原始にかえったようで、とても面白いんです。」
 チェッ生噛じりの哲学者メ。
「御両親のところで、当分落ちつくんですか……。」
「私の両親なんて、私と同様に貧乏で間借りですから、長くは居ませんよ、十二社の方は焼けてやしないでしょうね。」
「さあ、郊外は×××が大変だそうですね。」
「でも行って来ましょう。」
「そうですか、水道橋までおくってあげましょう。」
 青年は土に突きさした洋傘を取って、クルクルまわしながら、雲の間から、霧のように降
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