味噌汁や御飯を食べるのは、どうしても冬の方が多い。
 これからはトマトも出《で》さかる。トマトはビクトリアと云う桃色なのをパンにはさむと美味《うま》い。トマトをパンに挟む時は、パンの内側にピーナツバタを塗って召し上れ。美味きこと天上に登る心地。そのほか、つくだ煮の類も、パンのつけ合せになかなかおつなものです。マアマレイドは、たいてい自分の家でつくる。
 私は缶詰《かんづめ》くさいマアマレイドをあまり好かないので、買うときは瓶詰《びんづ》めを求めるようにしている。ありがたいことに、このごろ、酢漬けの胡瓜も、日本でうまく出来るようになったが、あれに辛子をちょっとつけて、パンをむしりながら砂糖のふんだんにはいった紅茶をすするのも美味い。そのほか私の発明でうまいと思ったものに、パセリの揚《あ》げたのをパンに挟むのや、大根の芽立てを摘《つ》んだつみな、夏の朝々百姓が売りに来るあれを、青々と茹《ゆ》でピーナツバタに和《あ》えてパンに挟む。御実験あれ。なかなかうまいものです。――梅雨時《つゆどき》の朝飯は、何と云っても、口の切れるような熱いコオフィと、トオストが美味のような気がします。
 朝々、バタ
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