び上る。

おゝ風よ叩け!
燃えるやうな空気をはらんで
おゝ風よ早く
赤いマリの私を叩いてくれ。
[#改ページ]

 ランタンの蔭

キングオブキングを十杯呑ませてくれたら
私は貴方に接吻を一ツ上げませう
おゝ哀れな給仕女

青い窓の外は雨のキリコダマ
さあ街も人間も××××も
ランタンの灯の下で
みんな酒になつてしまつた。

カクメイとは北方に吹く風か……
酒をぶちまけてしまつたんです
テーブルの酒の上に真紅な口を開いて
火を吐いたのです。

青いエプロンで舞ひませうか
金婚式! それともキヤラバン……
今晩の舞踊曲は――

さあまだあと三杯
しつかりしてゐるかつて
えゝ大丈夫よ。

私はおりこうな人なのに
ほんとにおりこうな人なのに
私は私の気持ちを
つまらない豚のやうな男達へ
おしげもなく切り花のやうに
ふりまいてゐるんです。

カクメイとは北方に吹く風か……
[#改ページ]

 お釈迦様

私はお釈迦様に恋をしました
仄かに冷たい唇に接吻すれば
おゝもつたいない程の
痺れ心になりまする。

ピンからキリまで
もつたいなさに
なだらかな血潮が逆流しまする
蓮華に座した
心にくいま
前へ 次へ
全28ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング