び上る。
おゝ風よ叩け!
燃えるやうな空気をはらんで
おゝ風よ早く
赤いマリの私を叩いてくれ。
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ランタンの蔭
キングオブキングを十杯呑ませてくれたら
私は貴方に接吻を一ツ上げませう
おゝ哀れな給仕女
青い窓の外は雨のキリコダマ
さあ街も人間も××××も
ランタンの灯の下で
みんな酒になつてしまつた。
カクメイとは北方に吹く風か……
酒をぶちまけてしまつたんです
テーブルの酒の上に真紅な口を開いて
火を吐いたのです。
青いエプロンで舞ひませうか
金婚式! それともキヤラバン……
今晩の舞踊曲は――
さあまだあと三杯
しつかりしてゐるかつて
えゝ大丈夫よ。
私はおりこうな人なのに
ほんとにおりこうな人なのに
私は私の気持ちを
つまらない豚のやうな男達へ
おしげもなく切り花のやうに
ふりまいてゐるんです。
カクメイとは北方に吹く風か……
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お釈迦様
私はお釈迦様に恋をしました
仄かに冷たい唇に接吻すれば
おゝもつたいない程の
痺れ心になりまする。
ピンからキリまで
もつたいなさに
なだらかな血潮が逆流しまする
蓮華に座した
心にくいま
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