ゃんが、
「世の中が泥棒ばかりだったら痛快だわ……」と云っている。由ちゃんは十九で、サガレンで生れたのだと白い肌が自慢だった。八重ちゃんが肌を抜いでいる栗色の皮膚に、窓ガラスの青い雨の影が、細かく写っている。
「人間ってつまらないわね。」
「でも、木の方がよっぽどつまらないわ。」
「火事が来たって、大水が来たって、木だったら逃げられないわよ……」
「馬鹿ね!」
「ふふふふ誰だって馬鹿じゃないの――」
女達のおしゃべりは夏の青空のように朗かである。ああ私も鳥か何かに生れて来るとよかった。電気をつけて、みんなで阿弥陀《あみだ》を引いた。私は四銭。女達はアスパラガスのように、ドロドロと白粉《おしろい》をつけかけたまま皆だらしなく寝そべって蜜豆《みつまめ》を食べている。雨がカラリと晴れて、窓から涼しい風が吹きこんでくる。
「ゆみちゃん、あんたいい人があるんじゃない? 私そう睨《にら》んだわ。」
「あったんだけれど遠くへ行っちゃったのよ。」
「素敵ね!」
「あら、なぜ?」
「私は別れたくっても、別れてくんないんですもの。」
八重ちゃんは空になったスプーンを嘗《な》めながら、今の男と別れたいわ
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