ケッコ鳴くのが
ほしんだろう……。
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 二人はそんな唄をうたっている。
 壺井さんのとこで、青い豆御飯を貰った。

(六月×日)
 今夜は太子堂のおまつりで、家の縁側から、前の広場の相撲場がよく見えるので、皆背のびをして集まって見る。「西! 前田河ア」と云う行司の呼び声に、縁側へ爪先立っていた私たちはドッと吹き出して哄笑した。知った人の名前なんかが呼ばれるととてもおかしくて堪《たま》らない。貧乏をしていると、皆友情以上に、自分をさらけ出して一つになってしまうものとみえる。みんなはよく話をした。怪談なんかに話が飛ぶと、たい子さんも千葉の海岸で見た人魂《ひとだま》の話をした。この人は山国の生れなのか非常に美しい肌をもっている。やっぱり男に苦労をしている人なり。夜更け一時過ぎまで花弄《はなあそび》をする。

(六月×日)
 萩原さんが遊びにみえる。
 酒は呑みたし金はなしで、敷蒲団を一枚屑屋に一円五十銭で売って焼酎《しょうちゅう》を買うなり。お米が足りなかったのでうどんの玉を買ってみんなで食べた。

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平手もて
吹雪にぬれし顔を拭く
友共産を
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