るのではありませんか。」
 今さきから、じろじろ私を見ていた二人の老婆が、馴々しく近よって来ると私の身体《からだ》をじろじろ眺めている。笑いながら涙をふりほどいている私を連れて、この親切なお婆さんは、ゆるゆる歩きだしながら信仰の強さで足の曲った人が歩けるようになったことだとか、悩みある人が、神の子として、元気に生活に楽しさを感じるようになったとか、色々と天理教の話をしてくれるのであった。
 川添いのその天理教の本部は、いかにも涼しそうに庭に水が打ってあって、楓《かえで》の青葉が、爽かに塀《へい》の外にふきこぼれていた。二人の婆さんは広い神前に額《ぬか》ずくと、やがて両手を拡げて、異様な踊を始めだした。
「お国はどちらでいらっしゃいますか?」
 白い着物を着た中年の神主が、私にアンパンと茶をすすめながら、私の侘しい姿を見てたずねた。
「別に国と云って定まったところはありませんけれど、原籍は鹿児島県東桜島です。」
「ホウ……随分遠いんですなあ……」
 私はもうたまらなくなって、うまそうなアンパンを一つ摘《つま》んで食べた。一口|噛《か》むと案外固くって粉がボロボロ膝にこぼれ落ちている。――
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