ありませんか
誰でもいい!
思想も哲学もけいべつしてしまった、白いベンチの女の上に
臭い接吻でも浴びせて下さいな
一つの現実は
しばし飢えを満たしてくれますからね。
[#ここで字下げ終わり]
家に帰る事が、むしょうに厭になってしまった。人間の生活とは、かくまでも侘しいものなのか! ベンチに下駄をぶらさげたまま横になっていると、星があんまりまぶしい。星は何をして生きているのだろう。
星になった女! 星から生まれた女! 頭がはっきりする事は、風が筒抜けで馬鹿のように悲しくなるだけだ。夜更け、馬に追いかけられた夢を見た。隣室の唸り声頭痛し。
(二月×日)
朝から雪混りの雨が降っている。寝床で当にならない原稿を書いていると、十子が遊びに来てくれた。
「私、どこへも行く所がなくなったのよ、二三日泊めてくれない?」
羽根のもげたこおろぎのような彼女の姿態から、押花のような匂いをかいだ。
「二三日泊めることは安いことだけれど、お米も何もないのよ、それでよかったら何日でも泊っていらっしゃい。」
「カフエーのお客って、みんなジュウ[#「ジュウ」に傍点]みたいね、鼻のさきばかり赤くしていて、真
前へ
次へ
全531ページ中303ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング