が病気だからって云ってやったのかしら……よけいなおせっかいだと思った。宿の女中の話では、「よく女の方がいらっしてお泊りになるんですよ。」と云っている。ブトウ酒を買って来た、いままでのなごやかな気持ちが急にくらくらして来る。苦労をしあった人だのに何と云うことだろう。よくもこんなところまで辿って来たものだと思う。街を吹く五月のすがすがしい風は、秋のように身にしみるなり。

 夜。
 ここの子供とかるめらを焼いて遊ぶ。

        *

(五月×日)
 六時に起きた。
 昨夜の無銭飲食の奴のことで、七時には警察へ行かなくてはならない。眠くって頭の芯《しん》がズキズキするのをこらえて、朝の街に出てゆくと、汚い鋪道《ほどう》の上に、散しの黄や赤が、露にベトベト濡れて陽に光っていた。四谷《よつや》までバスに乗る。窓|硝子《ガラス》の紫の鹿《か》の子《こ》を掛けた私の結い綿の頭がぐらぐらしていて、まるでお女郎みたいな姿だった。私はフッと噴き出してしまう。こんな女なんて……どうしてこんなに激しくゆられ、ゆすぶられても、しがみついて生きていなくてはならないのだろう! 何とコッケイなピエロの姿よ。勇
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