へ仕事に出て行った。婆さんと、子供とお君さんと私と四人で卓子を囲んで御飯をたべる。
「随分せいせいするよ、おしめりはあるし、二人は出て行ったし。」
 お婆さんがいかにもせいせいしたようにこんなことを云った。

(五月×日)
 新宿の以前いた家へ行ってみた。お由さんだけがのこっていて古い女達は皆いなくなってしまっていた。新らしい女が随分ふえていて、お上さんは病気で二階に臥《ふ》せっていた。――又明日から私は新宿で働くのだ。まるで蓮沼《はすぬま》に落ちこんだように、ドロドロしている私である。いやな私なり、牛込《うしごめ》の男の下宿に寄ってみる。不在。本箱の上に、お母さんからの手紙が来ていた。男が開いてみたのか、開封してあった。養父の代筆で、――あれが肺病だって言って来たが本当か、一番おそろしい病気だから用心してくれ、たった一人のお前にうつると、皆がどんなに心配するかわからない、お母さんはとても心配して、この頃は金光《こんこう》様をしんじんしている、一度かえって来てはどうか、色々話もある。――まあ! 何と云う事だろう、そんなにまでしなくても別れているのに、古里の私の両親のもとへ、あの男は自分
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