た。
「あいつが気が弱いもんじゃけん。」
陽にやけた侘し気な顔をして兄さんは私をなぐさめてくれるなり。家では嫂《ねえ》さんが、米をついていた。牛が一匹優しい眼をして私を見ている。私は、どうしてもはいりたくなかったのだ。何だか、こんなところへ来た事さえも淋しくなっている。白い道のつづいている浜路を、私はあとしざりをするように、宿へ帰って行った。
(八月×日)
朝風をあびて、私は島へさよならとハンカチを振っている。どこへ行っても、どこにも仕様のない事だらけなのだ。東京へ帰ろう。私の財布は五六枚の十円札でふくらんでいた。兄さんの家でもらったお金とデベラの青籠と、風呂敷包みをかかえて、私は板子を渡って尾道行きの船へ乗った。
「気をつけてのう……」
「ええ! 兄さん、もうストライキはすんだんですか。」
「職工の方が折れさせられて手打ちになったが、太いもんにゃかなわないよ。」
あのひとも寝ぶそくな目をさせて波止場へ降りてきてくれていた。「体が元気だったら、又いつか会えるからね。」そんなことを小さい声で云った。船の中には露に濡れた野菜がうずたかく積んであった。
ああ何だか馬鹿になったよう
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