の高い時ちゃんの顔をこっちに向けて日記をつけた。
「炭はあるの?」
「炭は、階下の小母さんが取りつけの所から月末払いで取ってやるって云ったわ。」
時ちゃんは安心したように、銀杏《いちょう》がえしのびんを細い指で持ち上げて、私の背中に凭《もた》れている。
「大丈夫ってばさ、明日からうんと働くから元気を出して勉強してね。浅草を止《や》めて、日比谷あたりのカフエーなら通いでいいだろうと思うの、酒の客が多いんだって、あの辺は……」
「通いだと二人とも楽しみよねえ、一人じゃ御飯もおいしくないじゃないの。」
私は煩雑だった今日の日を思った。――萩原さんとこのお節ちゃんに、お米も二升もらったり、画描の溝口《みぞぐち》さんは、折角北海道から送って来たと云う餅を、風呂敷に分けてくれたり、指輪を質屋へ持って行ってくれたりした。
「当分二人で一生懸命働こうね、ほんとに元気を出して……」
「雑色のお母さんのところへは、月に三十円も送ればいいんだから。」
「私も少し位は原稿料がはいるんだから、沈黙《だま》って働けばいいのよ。」
雪の音かしら、窓に何かササササと当っている音がしている。
「シクラメンって厭な
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