来たのではないか。

どこをさがしたって買ってくれる人もないし
俺は活動を見て五十銭のうな丼《どん》を食べたらもう死んでもいいと云った
今朝の男の言葉を思い出して
私はさめざめと涙をこぼしました。

男は下宿だし
私が居れば宿料がかさむし
私は豚のように臭みをかぎながら
カフエーからカフエーを歩きまわった。

愛情とか肉親とか世間とか夫とか
脳のくさりかけた私には
みんな縁遠いような気がします。

叫ぶ勇気もない故
死にたいと思ってもその元気もない
私の裾にまつわってじゃれていた小猫のオテクサンはどうしたろう
時計屋のかざり窓に私は女泥棒になった目つきをしてみようと思いました。
何とうわべ[#「うわべ」に傍点]ばかりの人間がうろうろしている事よ!

肺病は馬の糞汁《ふんじゅう》を呑むとなおるって
辛い辛い男に呑ませるのは
心中ってどんなものだろう
金だ金だ金が必要なのだ!
金は天下のまわりものだって云うけど
私は働いても働いてもまわってこない。

何とかキセキはあらわれないものか
何とかどうにか出来ないものか
私が働いている金はどこへ逃げて行くのだろう

そして結局は薄情者になり
ボロ
前へ 次へ
全531ページ中144ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング