、何もかも淡々しく子供っぽくなって来る。
雪の頃になると、いつも私は足指に霜やけが出来て困った。――夕方、沢山荷箱を積んである蔭《かげ》で、私は人に隠れて思い切り足を掻《か》いていた。指が赤くほてって、コロコロにふくれあがると、針でも突きさしてやりたい程切なくて仕様がなかった。
「ホウえらい霜やけやなあ。」
番頭の兼吉さんが驚いたように覗いた。
「霜やけやったら煙管《きせる》でさすったら一番や。」
若い番頭さんは元気よくすぽんと煙草入れの筒を抜くと、何度もスパスパ吸っては火ぶくれしたような赤い私の足指を煙管の頭でさすってくれた。銭勘定の話ばかりしているこんな人達の間にもこんな親切がある。
(二月×日)
「お前は金の性で金は金でも、金|屏風《びょうぶ》の金だから小綺麗な仕事をしなけりゃ駄目だよ。」
よく母がこんな事を云っていたけれど、こんなお上品な仕事はじきに退屈してしまう。あきっぽくて、気が小さくて、じき人にまいってしまって、ひとになじめない私の性格がいやになってくる。ああ誰もいないところで、ワアッ! と叫びあがりたいほど焦々するなり。
只一冊のワイルド・プロフォンディスに
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