ど、いま少し、若い女がぽつと明るくなるといゝと思ふなア、何だか暗くてじめじめしてゐるンぢやありませんか。そのくせ、どのひとも荒つぽくてがさつで、何だか、女の世界を感違ひしてゐるンですよ。怖い顏してる女の顏が妙にうようよ目立つやうになりましたねえ。會社で見てたつてそうですよ。女事務員なンかが大金を持つて使ひに來るンだけど、金をつかんで出すかつこうが、もうまるでライオンみたいに亂暴なンです。澤山の金をみても胸がどきどきしないンですね。へいちやらな顏をして、預けに來るンだから、これでは男の給仕の方が女みたいだと話しあふ時があるンですがね。女がおしやれをしなくなると、男よりも荒さんでひどくなつてしまふンですね。全くよくないけいこうですよ。かへつて、三十をすぎた商家のおかみさんの方がよつぽど色氣があつて人情がこまやかですね。――いまごろの若い女は、いつたい何を考へ、どんな希望を持つてゐるのか少しもわからない。水を與へないで、美しい花を見ようと云ふのは世間が無理ですよ。關西のどこかでは、一日、お白粉をつけない日をつくつてみたり、紅を塗らない日をつくつてみたり、どうにも厭なことですな」守一はそんなこ
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