と云うことを同|組《くらす》のものに聞いたことがあったがこれはうれしかった。卒業写真に、私は黒木綿の紋付《もんつき》を着てうれしそうに写っているが、これは下級生の紋付を借《か》り着《き》して行ったもので母もその当時は、卒業出来るのなら工面《くめん》してでも紋付を造ってやったにと云い云いした。
 この学校を卒業して十三、四年になるが森先生は木更津の中学校にいまだにいられるかどうか、私はそれきりお逢いしたことがない、いまでは老齢になっていられることであろう。私はこの先生にだけは逢いたいと思っている。



底本:「林芙美子随筆集」岩波文庫、岩波書店
   2003(平成5)年2月14日第1刷発行
底本の親本:「林芙美子全集」文泉堂出版
   1977(昭和52)年
   「林芙美子選集」改造社
   1937(昭和12)年
初出:「文芸首都」
   1935(昭和10)年4月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:岡本ゆみ子
校正:noriko saito
2008年3月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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