をかこんだ。床の間には安並と杉枝達の父親。左右向ひあつては、與田先生と登美子、その他はごちやごちやと、中學生だの、母親だの、杉枝だの女中と並んでゐる。
登美子は白いブラウスに紺のスカートを着てゐた。安並もこれが與田先生に見せて貰つた寫眞の姉の登美子なのかと、紹介されてしみじみとあいさつを交してゐる。落ちついてゐて、杉枝のやうに艷なところはなかつたけれども、安並は長い間、このやうな品のいい女性を求めてゐたやうな氣がした。變屈で、無口で、華美なことのきらひな娘だと與田先生は登美子のことを話してゐたものだ。
面長だつたが顏はほどよく小さくて、眼が一座の誰よりも美しく輝いてゐる。時々おもひがけない時に非常なすばやさで千萬の言葉を語る熱情をその眼はたたへてゐた。唇はひきしまつてゐて、唇尻がいやしくなくゑくぼのやうにひつこんでゐる。父親の顏によく似てゐた。
登美子達の兩親も、安並の人柄が氣に入つたのか、非常にうれしさうで、無口で人ぎらひな父親まで何十年前かの支那旅行の話なんかを持ち出してゐる。
杉枝は今日は花模樣の派手な洋服を着て、さかんに女中と出たりはいつたりして働いてゐた。眼鏡をかけた
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