どしているンです。」
「今夜はいい月夜ですね。」
「ああ、わたしは夜が一番樂しみです。人間がねてしまうと、もうわたしはひとりで何を考えてもいいのですからね。尻をひっぱたく人もないし、一番樂々とします。」
 狐はほろりとしました。こんなに王樣のようなからだをしていても、自分たちよりつらいことがたくさんあるのだなと同情しました。
「わたしは、このまま山へかえってしまえば、もう二度と里へはおりて來ませんけれど、元氣でいて下さい。そのかわり、夜の夜中に、山の上で、わたしは時々うたをうたってあげましょう。あああの時の六兵衞狐は元氣だと思って下さい。――ほら、かすかに梟がないているでしょう。あの木のそばにわたしの巣があるのです。きっときいて下さい……。」
 六兵衞狐は、氣のいい正直者の牛と別れて、淋しい山道を祖谷《いや》の山の中へいそいそと登ってゆきました。
「ああ助かってよかった。何といっても自分の天地が一番いい。おかあさんはどんなに喜んでくれるだろう。」
 六兵衞は腹のへったのも忘れて、まるで飛ぶようにしてお山へかえりました。晝間の雨はからりと晴れて、まるで晝のように明るいお月樣が山や森を照し
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