しますと、
「それは氣の毒でしたね。人間というものは何とも勝手なもので、わしらのようなものまで、尻をひっぱたくのだからいやになるのさ。わしだって、たまには、からだのだるい時もあるのだが、何にしても、一日も無駄にはやすませてくれないでねえ……無理な仕事をする時、わしは時々、泣くこともあるのさ。いくらこんな生れあわせだといっても、これも神さまのおぼしめしで、こんなものに生れてきているのだもの、一つだってわしは惡いこともしたことはないのに、尻をぴしりツぴしりツとむちでなぐられる時は、つくづく泣きたくなってしまうよ。生れあわせで仕方がないけど、お前さんのように身輕るに山の中で自由に住める身がうらやましいさ……。」
と、いいます。狐も何だか牛がかわいそうで仕方がありませんでした。
「ほんとに赤兵衞さん、そうですね。わたしたちだって、人間だって、そうながくは生きられないのだから、嘘なんかいわないで、たいらに世の中をくらしたら、それが一番いいですね。あなたは、さっきから口をもぐもぐしていますが、何をたべているンですか。」
「別に何もたべてはいないのですよ。夕方たべたわらをいま食べなおして、胃からも
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