した。
龜さんがはいってゆくと、尺取蟲が村長によばれて行きました。
しばらくして尺取蟲の娘さんは眼を泣きはらして出て來ました。それから迷い子の蛇が呼ばれましたが、これもすぐ、二人の番人がおそるおそるついて出て來ましたが、小蛇はみんなの前で金網の中へいれられました。もぐらもちのお婆さんは、みじんこ[#「みじんこ」に傍点]のつくだ煮を村長さんへ贈りものにしたとかで、笑いながら出て來ました。雀の親子は長いあいだぴいちくぴいちく村長さんと話していましたが、これも元氣で出て來ました。
さて龜さんの番です。
龜さんは胸がどきどきしました。どんなことをいって蛙の村長さんに好かれたらよいのかわかりません。
おずおずと村長さんの部屋へはいっていくと、村長さんはメガネをかけて椅子に腰をかけていました。
「へい、わたしは龜池村の龜十と申しますもので、はるばる蛙村へ出掛けてまいったものでございます。」
「ふうん、龜池村というのはどんなところだ。」
「はい、大きい池がございまして、魚がたくさんおりまして、わたしたちは住むところがないもので、こちらに働き口はないかと思ってまいりました。」
「お前さんはど
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