んな演説が出來るかね。」
「演説……。」
「そうだよ。」
「わたしは演説なんか生れて一度もしたことはございません。わたしは、生れるとから[#「生れるとから」はママ]默って働いてきたもので、おしゃべりなぞとても出來ません。」
「この村に來たからには、演説が出來なければ駄目だよ。自分の意見をもたないものは住むことはおことわりだ。」
「それは困りましたね、わたしは只、働く一方で、どうしてもしゃべる事は出來ないのでございますが……。」
 龜はお金を持たないので、そのまますごすごと蛙村をたちさらなければなりませんでした。
 夜になって、麥畑の上を美しいまんまるいお月さまが光っていました。おなかのすいた龜さんは、むっくり、むっくり、みみずのいたところまでもどって來ました。
「みみずさん、今晩は……。」
「おやおや、どうしたの龜のおじさん。」
「蛙村から追い出されて戻るところだよ。」
「それは氣の毒だなア……。」
「わたしはもう眼がまいそうだ。」
 龜のおじさんは荷物をおろして、首も手足もちぢめて石ころの上へしゃがみました。近くでがやがやと蛙の演説がきこえています。
 龜さんはかわいた固いこうらをほ
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