魚の序文
林芙美子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)云《い》って
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二十三|歳《さい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)洗い※[#「日+麗」、第4水準2−14−21]《ざら》した
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それだからと云《い》って、僕《ぼく》は彼女《かのじょ》をこましゃくれた女だとは思いたくなかった。
結婚《けっこん》して何日目かに「いったい、君の年はいくつなの」と訊《き》いてみて愕《おどろ》いた事であったが、二十三|歳《さい》だと云うのに、まだ肩上《かたあ》げをした長閑《のどか》なところがあった。
――その頃《ころ》、僕|達《たち》は郊外《こうがい》の墓場の裏に居を定めていたので、初めの程は二人共|妙《みょう》に森閑《しんかん》とした気持ちになって、よく幽霊《ゆうれい》の夢《ゆめ》か何かを見たものだ。
「ねえ、墓場と云うものは案外美しいところなのね」
朝。彼女は一|坪《つぼ》ばかりの台所で関西風な芋粥《いも
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