‥‥」
二人は安樂椅子の話にも飽いて來ると、雨だれの音を聽きながらむつつり押し默つてゐた。
「ねえ、ドライヴでもしませんか?」
「まア! ドウイヴ? いいわね、雨の中のドライヴなンて素的だわ‥‥」
たか子は納戸にはいると、洋服を着てゆくのだと云つて、
「ねえ、一寸、徹男さんいらつしてよ、この黄ろいジヤケツをかしいかしら?」
徹男は苦笑ひに似た表情で、
「何でもいいでせう、寒くさへなけりやア‥‥」と云つた。
軈て二人は、白い自動車に乘つて信濃追分の方へ走つて行つた。野も樹木も人家も走つて行く。電線も濡れて光つて矢のやうに走り去る。革のやうな濕つた匂ひがたか子の鼻をついて、たか子は、少女のやうなはしやぎやうだつた。
「ねえ、このままどこかへ行つてしまひたいとおもふわ‥‥」
「私が惡い男だつたら、このまま奧さんをどこかへ連れて行く處ですね‥‥」
「まア、惡いひとぢやないの‥‥さつきから、あなたを惡いひとだと、おもつてゐるのよ‥‥」
「僕が、惡いひとですかねえ、これでも、僕の友人達は、僕をいいひとだと云つてくれますよ‥‥」
「お友達にはいいひとかも知れないけど、わたしには、とても惡いひ
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