は女の神樣だぞ。」
「そんなら、頭[#「頭」に傍点]の後から御光が射すんだよ。」
 木内先生が通ると、みんな先生の後へ走って行きましたが、セルロイドのSピンに陽があたっているきりでした。――むつは、學校へ行っても太郎を連れてゆかなければならないので、それがいやでいやでなりませんでした。太郎は皆が臭い子供だと云います。本當に小便臭いので暑くなって來るとおぶうのがいやでいやで仕方がありませんでした。

 むつは、雲について歩きました。今日は學校を休んでしまったので、畑徑を歩いていても、村中に子供がいないのでせいせいした氣持ちでした。むつは取りのこされたように淋しかったのですけれど、學校へ行くのは嫌いでした。むつは字を讀むことがむずかしかったし、何度教わっても、別のことばかり考えているので、すぐ忘れてしまいました。
 むつは、學校を休んで家にいる事も好きませんでした。家の中はごみっぽくって、何年も天井をはらわないので、くもの巣に煤がたまって、魔物の家にいるようなのです。今日も太郎を寢かしつけると、むつは雲を追って、馬鈴薯畑の方へ出ました。森も畑も海のように青くて、それたちを見ていると、馬の背
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