ぶるぶるふるえ出しました。引っぱり出されたら、どんなに毆られるか判らないと思いました。
「おい、こりゃア、まア、なわでしばられているぞ、どうしたのかや。」
「ほら、これが神がかりとか神隱しとか云うのじゃねえか。」
「怖わがらせちゃいけないよ。脊筋がぞくぞくするよ。」
むつは、たくさんのちょうちんにまもられて、大きな男の背におぶさって家へ歸りました。家へ歸ってからも眼を固く閉じていました。村のひとが騷いでいるのが面白かったのですけれど、だんだん悲しくなりました。むつの母親はわけのわからないことを叫んで土間を上ったり降りたりしていました。太郎は火がついたように泣いています。むつは顏の上へ水を吹きかけられました。ふと眼をあけると、村中のひとたちがむつの顏をのぞきこんでいました。
むつは眼をあけると腹がへったと云いました。母親はそば粉をかいて醤油をかけたのをむつの口もとへもって來ました。
「明日は米の飯を食わしてやる。」
と、母親がふるえこんでいると、隣の茂の婆さんが、卵を飮ましてみろと、言いました。むつはあわてて、卵は嫌いと言いました。
「ま、元氣が出てええ。」
そう言って、皆が秩序
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