だかおとうさんの、このときの笑った顔を忘れることが出来ません。
「子供があるから、私たちすくわれるのよ、子供って花束みたいなものね。にぎやかでいいわ」
「こいつたちがいるから安子も今日まで一しょうけんめい生きていたのだといってますよ」
安子というのは僕のおかあさんの名前です。
4
僕のおとうさんは、とてもお話が上手です。おとうさんは自分で話をつくって僕たちに話してくれます。
――あるところに豚と鶏がいて、ふたりはとても仲よしでした。鶏はいつも豚のそばで餌をついばんでいました。夜になってお月様の出るのがいちばん好きでした。豚はお月様が出る夜だと、ひとりできもちよさそうに唄をうたいました。
それはこんな唄です[#「唄です」は底本では「唄ですす」]。
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お月様
わたしはきばがほしいのです
いのししになって
お山のなかの森のふかいところへ
わたしのおうちをつくりたいのです
森のけものが
みんなでわたしをうやまうように
わたしに大きいきばを下さい
わたしは山の大将になりたいのです
いのししはつよいです
わたしはいのししになりたいのです
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