終わり]

 豚はお月様にこんなおねがいごとをしました。豚はとうとういのししになりました。いのししになると、急におなかが空いてしかたがないのです。自分のそばでよくねんねしている鶏のひよこを食べようかと思いました。鶏とは大変仲がよかったけれど、もういのししになったのですから、豚は何となくいばってみたくて鶏を起しました。
「おいおい鶏さん起きないか」
「あら、もう夜があけたのですか、豚さん」
「まだ夜中だよ、いいお月様だよ」
「あああかるいのはお月様のせいですか」
「鶏さんは、わたしのこのきばが見えるだろう」
「きば」

「わたしはねえ、今夜からいのししになったんだぜ」
「まア、いのししに、まだ、何もみえないけれど、どうしてきばなんか持ってきたんですか?」
「持ってきたんぢやないよ。わたしはもうほんとうのいのししさんなんだぜ。君のひよこをすこしわけてくれないかね。わたしはさっきからとてもおなかがすいているんだよ」
 鶏はびっくりしました。
 急に羽根の下のひょこをきつく抱きしめました。ひよこは六羽いました。ひよこはぴよぴよなきました。豚はじっと月の光で鶏をみていました。二羽のひよこが鶏の羽
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