て英語でなんていうの?」
とききました。
「ポテトさ」
とおしえてくれました。
「ぢやア、家は」
「家はハウスさ」
「ぢやア」
「ずいぶんきくんだなア」
要さんが笑い出しました。年子ねえさんがラジオをかけました。とてもうきうきするような音楽です。
「全く、世の中が変りましたね」
おとうさんがそういいました。
「ほんとうに。でも、気持だけでもこのほうがたのしいぢやアありませんか、もうめんどうくさい話ってあきあきしていますよ。馬鹿な戦争をよくも長くつづけたものですよ」
「いいところで終戦になって、ほっとしましたね。でも、良ちゃんや兼ちゃんがどうなっているか心配ですね」
「三年も四年も待つなんてつらいし、親の身にもなって下さいよ。これこそつまらない運命ですよ」
おばさんははほろりとしています。僕は又英語を持ち出しました。
「要さん、歌ってどういうの」
「ソングさ」
「ソングって人の名前みたいね」
静子がおもしろいことをいいます。
「おとうさんってフアザアっていうのよ」
静子が知ったかぶりでいうと、みんなおとうさんの方をみて笑いました。おとうさんも白い歯をみせて笑いました。僕は何
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