す。僕たちがおべんとうを出しますと、おばさんはくすくす笑って、
「義理がたいことねえ、――昔のことを考えると、いまの子供たちはふびんだわ」
とおっしゃいました。
僕はおばさんのいうような、僕たちがふびんだなんてすこしも思わない。先生だっておっしゃったのだもの。いまの子どもたちはいちばんこれからいい人になるって、敗けたのはいいことだって、これからほんとうの気持でやりなおして、たのしい国になるんだっておっしゃったのをおぼえている。
「荘吾さんは、これからどうするんですの?」
荘吾というのは、僕のおとうさんの名前です。おとうさんは「そうですね」といって、もう「会社員なんかいやになったから、田舎へ引っこんで百姓でもしようかと思ってますがね」といいました。
「だって、しろうとがすぐ百姓になれるかしら、第一、土地だってないでしょうしね。田舎もいまはおじいさんもなくなられたし、どうにもしかたがないことよ」
おばさんは、僕たちにいもをむしてくれました。
僕は、おとうさんの心ぼそい顔をはじめてみました。おとうさんは、沈んだようにみえました。僕は、何となくさみしくなったので、要さんに、
「いもっ
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