ちゅうはどんなに悲しかったでしょう。僕はそのころ、おかあさんとふるえながら、壕の中で、一面火の海になったのを見ていましたけれども、らんちゅうのことなんか気がつきませんでした。
金井君の家では、空地を借りて七百本もいもを植えたので、もうじき、いもほりをするから持って来てあげようといってくれます。人にとられるといけないから早ぼりをするのだといっていました。
19[#「19」は縦中横]
夜、要さんが遊びに来ました。要さんのおうちも暮しが大変だから、学校をやめてしまって、印刷所につとめに行くのだと相談に来たのだそうです。
要さんの姉さんも、いまはタイピストになって丸の内の会社につとめています、いまは、どこのおうちも大変な時なのだと思います。
僕も、中学なんか行くのはよそうと思ったりしますけれど、考えてみると、中学へ行くことをやめるのはいやだと思いました。僕たちが中学へ行くころは、何とかいい暮しになるといいと思います。
要さんが学校をやめるといいますと、おとうさんはふきげんな顔をしてだまっていました。
「だって、このままぢゃ仕方がないでしょう。僕は、年をとってから学校へ行
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