よ」
 僕のおとうさんも金井君の発明にはおどろいています。
 勉強がすむと、さっそく金井君はらんちゅうのうたをつくりました。

[#ここから2字下げ]
はでなおじさんだなァ
黙っているから変だよ君は
ぬれたきものをいつかわかすの
どこへでも水をもって旅行している
らんちゅうのおじさん
どこから来たの君は
だまっているから
みんなが君を笑っているよ。
[#ここで字下げ終わり]

 僕はなかなか金井君みたいにはやく出来ません。
「ハヴァハヴァ」
 と、金井君がせきたてると、なおさら出来ないのです。ただ頭の中をパンのように大きい金魚がうろうろしています。
 今日は日曜でおとうさんはおうちです。
「金井君、これはどうだ、おじさんの歌はつまらないかな‥‥」
 おとうさんが和歌をつくって持って来ました。

[#ここから2字下げ]
水の上の水の光にらんちゅうは
きわまり燃ゆる四囲ながめぬ
[#ここで字下げ終わり]

「これはねえ、空襲最中のらんちゅうだよ」
 そういって、おとうさんはおかしそうに笑いました。
 家が焼けている最中に、らんちゅうなんか持って逃げる人はないでしょう。水がにえて来る時のらん
前へ 次へ
全79ページ中67ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング