よ」
僕のおとうさんも金井君の発明にはおどろいています。
勉強がすむと、さっそく金井君はらんちゅうのうたをつくりました。
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はでなおじさんだなァ
黙っているから変だよ君は
ぬれたきものをいつかわかすの
どこへでも水をもって旅行している
らんちゅうのおじさん
どこから来たの君は
だまっているから
みんなが君を笑っているよ。
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僕はなかなか金井君みたいにはやく出来ません。
「ハヴァハヴァ」
と、金井君がせきたてると、なおさら出来ないのです。ただ頭の中をパンのように大きい金魚がうろうろしています。
今日は日曜でおとうさんはおうちです。
「金井君、これはどうだ、おじさんの歌はつまらないかな‥‥」
おとうさんが和歌をつくって持って来ました。
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水の上の水の光にらんちゅうは
きわまり燃ゆる四囲ながめぬ
[#ここで字下げ終わり]
「これはねえ、空襲最中のらんちゅうだよ」
そういって、おとうさんはおかしそうに笑いました。
家が焼けている最中に、らんちゅうなんか持って逃げる人はないでしょう。水がにえて来る時のらん
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